千利休から考える政治家のあり方

東京都議会議員の川松真一朗(墨田区選出・41才)です。

最近、これまで書き溜めてきた取材ノートや自習ノートを読み返す事が多くなりました。過去に学んできた事柄、経験の中に混迷の時代を乗り越えるヒントがあるのではないかと考えているからです。

そもそも、私が政治家として歩み始めた頃、歴史上の政治家の発言を展開したり、過去の事案を並べて、政治を語るだけでは道は切り拓けないんだと言われた事がありました。でも、コロナ禍でよく考えてみると「過去の事例だけを紹介して、それっぽい事を言うな」という戒めであって、「過去を参考にするな」という事ではないのかなと感じるようになりました。

そこで、私が学生時代から積み重ねてきた知識、経験、人脈などを今一度振り返り、より高みを目指すためにと整理を始めたのが今年です。特に私は令和4年の目標を「挑戦〜be a Risk Taker〜」としています。リスクを取るのが挑戦者であって、政治家だけでなく経営者も、その節目節目でリスクを取って事を為さねばなりません。口先だけの「挑戦」は気概が伴わない、だからチャレンジャーではなくリスクテイカーを目指すとしたのが年初です。

さて、2月中旬に入ってから私の中にあるエネルギーが変化したというか、多くの世界中の仲間と議論する機会に恵まれています。20年ぶりに再会したアーティスト、ずっと様々なご縁で会える機会があったのに会えなかった同学年の経営者、世界的なスポーツエージェントをはじめとして、医療、芸術、農林水産部門などの第一線で活躍する方々との中身の濃いディスカッションによって、ハッと目が覚めた2月です。

特に、旧友との交流も多い事から、過去に学んできた取材ノートにも「今を生きる」ヒントが沢山あるのだろうと思い、引っ張り出したわけです。前述のように、紹介するだけでは三流なので、私なりに噛み砕いてどう活動にフィードバックさせていくかを記していきたいと思います。

ということで、

今日は千利休です。
有名な利休七則に没頭していた時期があり、今、あらためて噛み締めているところです。

 1. 茶は服のよきように

 2. 炭は湯の沸くように

 3. 夏は涼しく冬暖かに

 4. 花は野にあるように

5. 刻限は早めに

 6. 降らずとも雨の用意

 7. 相客に心せよ

1、茶は服のよきように
これは幼少期の石田三成が豊臣秀吉に出した三献茶が分かりやすいです。
1杯目は、鷹狩りの帰りだったので大きめの茶碗にぬるめのお茶を。これだとガブガブ飲めますよね。
2杯目は、1杯目よりも小ぶりな茶碗に少し熱めにして。

3杯目は、高価な茶碗に熱々で。

つまり、相手の求めるものからベストを考えると言う事ですよね。自分勝手な都合ばかりでなく、相手が「何を求めているか」をよく考えて内容を変えていく、今のコロナ対応で政治・行政に欠けてる要素だと考えています。

2. 炭は湯の沸くように
湯を沸かせる際に、最初の炭の置き方など準備の大切を教えています。お茶を点てるお湯というは、水を釜に注いで、炭を使って沸かしていきます。この事前の準備は客人からは見えないものですが、重要なポイントです。ここが疎かになると、うまくお茶に泡が立たないのです。

政策は課題が表面化して、右往左往するようではいけません。一事が万事ですが、常に必要な政策は社会実情を把握しながら、自然体で打ち出していくもので、今の場当たり的な政策の出し方では、より良い政策が展開されるとは考えていません。

3. 夏は涼しく冬暖かに

当然ですが、利休の生きた時代は戦国時代から安土・桃山時代にかけてですから、冷暖房設備はありませんでした。そのため、皮膚感覚だけでなく、視覚や聴覚への働きけもして、茶人の感性に訴える演出で涼や暖を展開していました。

その演出さえも気づかないのが茶人のおもてなしです。

自然と暑さ涼しさを感じる空間になっていれば、それは相手の事を最大限に考えて行った結果です。私はいつも政治家や役人は、水のように空気のように、人々が困る事を先回りして解決しておくのが本来の仕事だと常々口にしています。
今のコロナ対応のように「大変だ、大変だ」と騒ぐ政治家は、その時点でアウトだと思うんです。政治家の本来の仕事は「大変にしてはいけない」事だお思っています。

4. 花は野にあるように
これはポイントがあって「野にあるように」であり、「野にあるままに」ではないんですね。
「写実」ある本質的な姿を切り取って描くことを説いています。ですから「野に咲くのと全く同じように花を生けろ」という話ではありません。

写真は「ありのままに」ですが、相手のある環境では相手がどう捉えるかで全てが変わります。例え、生けたのが一輪であったとしても、捉え方次第では大輪の花が咲いているように表現できるものです。

これは政治家や役人に足りないところです。一言一句、教科書や役人の報告書に記してあるように説明しても誰も理解出来ないどころか聞く耳を持ってくれません。本質を捉えて、今、何を伝えるべきかを的確に表し、相手に届ける重要性を私はここから転じて肝に銘じています。相手を考えず、喋ってしまう政治家、役人と過ごすほど無駄な時間はありませんからね。

5. 刻限は早めに
この刻限は「時刻」に対する認識。

待ち合わせの約束に早めに行きましょうという「単純な呼び掛け」では当然ありません。

これは心の余裕の大切さを説いています。常に早め早めの動きならば「ゆとり」が出来ますよね。
私は、どうしても議会日程の無い日は、結構タイト目に予定を入れがちです。地方への移動も、新幹線・飛行機とかなりギリギリで「間一髪セーフ」みたいな事が多くなりがちです。

しかし、これは一事が万事で、押せ押せで動いて、頭の中で休んでなく「ゆとり」がないと、相手の事を思いやる「心の余裕」がなくなります。大体、飛び乗っても車内機内では、キーボード打ったりしますから。

焦りは常に禁物で、刻限の意識があれば、時間からくる「焦り」は無くす事ができます。

 6. 降らずとも雨の用意
予期せぬ雨が降れば傘が必要になります。その時に傘を自然と差し出せるかが重要です。
あらゆるケースを想定して準備をしておかなければなりません。ここでは「雨の用意」という一例ですが、あらゆる非常事態を予測して動かねばなりません。客人の憂いを除去する為に、先回りしておく事です。

今の政治家やマスコミに足りない要素の1つです。人々が憂い多数が動き出してから騒ぎ出す、これへのカウンターで出す政策に本質を突いたいいものにはなるはずがありません。自治体間でコロナ対応の差があるように、早め早めであらゆる想定をしている自治体は、住民サービスが手厚くなっていますよね。もっとも、多数の憂いが目に見えても「決められない」「責任は他へ」という為政者もいるのが実情です。

 7. 相客に心せよ
正に一期一会の精神が根底にある茶の世界。
初めての方も、日頃から冗談を言い合える友人も、茶席に上がれば皆さん相客だと。
「親しき仲にも礼儀あり」と言われますが、「親しさ・睦まじさ」と「馴れ」の違いです。

何事にも純真に無垢な気持ちで接するという事です。
私も常に先入観を持たず、あらゆる人と向き合うように心がけています。ですから、常に活動のヒントが生まれてくるんだと考えています。

これは千利休の初歩の初にしか過ぎません。
この体育会系の私が「茶の世界観・哲学」に惹かれたのは社会人になって直ぐの頃です。千家十職の系譜にあたる方を紹介してもらった事がきっかけです。そこから、千利休を学び、なぜ日本だけでなく世界から「その心」に触れようとする人が多いのか疑問に思ったところからでした。

※千家十職
三千家の流れを汲む茶道具を、代々制作する職人の方々。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です