政治の役割を小池都政下で考える。

東京都議会議員の川松真一朗(墨田区選出・41歳)です。

議場外での激論!?
さて、令和4年度予算案審議にあたって都政関係者の激論が議場内外で交わされたテーマの1つが「高校3年生までの医療費無償化」です。

令和4年1月28日に発表された東京都令和4年度予算案で新規項目として『高校生等医療費の助成』{子育て支援の充実のため、高校生相当年齢への医療費助成制度の開始に向けた区市町村等の準備経費を補助}7億円というものが計上されていました。この政策をめぐって、様々な動きがあった事を報告します。

この予算案は事実上の東京都による高校生までの医療費助成スタートの意向を示した事を意味しました。7億円かけてシステム改修を行うというものですから、システム改修するだけで「助成しない」という事はあり得ません。

現場の了承はあったのか?
東京都では現在、中学生までが「子どもの医療補助対象」となっています。これを子育て支援の観点からも、補助対象を高校生まで拡充させるというのは大切な事だと私は考えます。小池都政として、予算案発表と共に、そういう意向があると世に示した事は重要ですが、実際に実務を担う区市町村との調整が済んでいない中での発表は「現場が混乱する」という危機意識を私達は持ちました。

というのは財源論の課題もあります。
実際に医療費無料化を実施するのは区市町村です。この医療費について都は所得制限を設け、未就学児は自己負担分の半額を、小中学生は自己負担分から200円を引いた額の半額を補助。残りの半額を実施主体の区市町村が負担しているのです。区市町村は小中学生の200円分や、所得が対象外となる世帯も助成することで医療費を無料化してきているのが実情です。一部の市区町村はすでに独自に高校生までの補助を行っており、千代田区、北区、品川区、武蔵野市、狛江市などでは高校生まで医療費の自己負担がほぼゼロになる制度を動かしています。

この東京都が新方針を打ち出す以前から、都内各地での対応の差がある中で、上記にもあるように「都負担分」「区市町村負担分」が決まらないうちに「高校生まで無償化にします」と東京都が高らかに宣言しても、仮に「100%東京都持ち」でない限り、区市町村の財源を小池都政の方針で突然圧迫させる事になってしまうのです。

繰り返しになりますが、「高校生までの医療費無償化」という政策に異論を唱えているのではなく、持続的に都内あまねく一律に実施される為には、システム準備と同様に各行政の財源論が明確になっている事が最低条件だろうという観点から「政策決定プロセス」に苦言を呈したのが1月です。

突如、方針が決まる
そして、予算案について、バチバチの議論が展開される3月7日からの予算特別委員会質疑で、この「政策決定過程」について小池知事並びに都庁舎側の姿勢が問い質されるだろうと思っていたのでした。
ところが、3月3日に小池百合子知事は記者団に「高校生などを対象に医療費助成している自治体は限られている。都として全ての区市町村で早期に実施されるよう推進していく」と述べ、来年度から3年間にわたって「区市町村分負担は無し」「東京都が全額負担する」と発表しました。

この発表を受けて都庁記者クラブの面々は「自民党の指摘に知事が答えましたね」と私のところにもやってきました。前回のブログで書いた介護職サポートも件も含めて、福祉保健局分野は小宮あんり幹事長の専門領域ですから、本件でも先頭に立って問題を指摘し続けました。(私は医療提供体制・地域医療などの狭いレンジでは福祉保健分野に取り組んでいます。)そんな様子を見ていた記者が多くいる事は少し嬉しく思います。

でも、これは一事が万事で、コロナ対策でもそうですが、「政策決定プロセス」の不透明さは最近本当に多いと感じます。私が学生時代から研究してきた政治の世界は「族議員」と呼ばれる専門的な知見を持つ議員同士、あるいは担当の幹部役人が激しい議論を重ねて1つの政策が出来上がっていくという姿でした。実際に水面下での議論の様子なども、岩井教授の鞄待ちとして身を持って体験してきた事です。私なりの政策決定過程論哲学もって、議会人として都政運営をチェックしていきます。

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