東京都議会議員の川松真一朗(墨田区選出・都議会自民党最年少)です。
採決が強行されるに至るまで
10月3日は都政史上に汚点を残す日となりました。この日は東京都議会総務委員会の条例案採決日でしたが、その条例が「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例(案)」です。過日、この件についてはブログを書きました。
「東京都は本気で【いかなる差別】を無くそうとしているのだろうか。(9月21日)」
そもそも、自民党は本審査に当たっては参考人招致を求めていました。しかし、9月28日の総務委員会理事会において不成立。結果、10月2日の1日しか質疑が無い議会日程となりました。
これまでの経緯をまとめますと、東京都が条例案を提示したのは9月12日という第3回定例会の告示日です。開会日は9月19日で、代表質問が26日一般質問が27日で条例案を提示されたから十分な検証を出来ぬままに採決となったのは自明です。
事の経緯は?
東京都はパブリックコメントを本条例について募集しましたが、様々な角度からの批判も多かったわけです。(参照:パブコメ結果)
実際に私達が調べていきますと、本条例が成立後に現場を司る事になる区市町村や関係者からの意見聴取もなく不十分だと判明。
この間、都議会自民党として5回以上にわたり、所管局である東京都総務局担当者と意見交換を実施しましたが、都の説明は概要資料に基づくものであり、条例提案前の素案もよく分からず内容の精査は不可能だったのです。それならば、10月2日の審査1日では議会の役割・責務を達成する事は到底難しいと思うのは普通の感覚です。しかも、本条例の課題となっている人権問題は都民生活に広く深く関わる重い問題。理念条例とは言え、このままでは東京の未来に大きな禍根を残す事になってします。
どうやって現場は対処すべきか分からない
そこで前述のように参考人招致を、慎重かつ精緻な審査を行うために自民党は提案したわけですが、結果、他の会派と足並みが揃わず理事会で不成立となったわけです。この条例の大まかな観点での問題は前回のブログにありますが、私達が継続審査を求めた大きな理由はこの条例の実効性が明確にならないからです。
そもそも、東京都は平成27年8月にオリンピック憲章の理念実現を謳った新しい「東京都人権施策推進条例」を制定しています。その上で、今回の条例をどう取り扱うかという基本計画がこれからで具体的な内容が不明なのです。ですので、今のまま条例が成立すると、差別的取扱い禁止の責務が定められるわけですから、公衆浴場や公衆トイレの使い方、さらには、事業を営む立場からは、施設のハード面整備など具体策への対応が必要になってきます。
パフォーマンス条例は要らない
差別禁止は都民にとって、日常生活、仕事、家庭と、ありとあらゆる場面に影響を及ぼします。実際には、国がこの課題について大きな方針を示す法律については未制定。まもなく整備されると言われる、この法律を待ってからでも遅くない。理念とは言え、差別禁止を条例で安易に明示する事は社会に混乱を発生させるのではと危惧をしています。
見かけだけの条例を作って差別をなくすというスローガンではなく、都民、国民が日々の暮らし、活動の中で社会全体での理解の増進・啓発に取り組む相互理解による社会実現の後押しが重要です。その上で、当事者の意見をしっかり聞いてから、地に足のついた実効性のある条例を目指したいというのが自民党の強い思いです。
やはり1章よりも2章3章
実際に放送されたNHKでは本条例について「都によりますと、性的マイノリティーやヘイトスピーチに焦点をあてた都道府県の条例の制定は初めてだということです。」と表現しました。ニュースのタイトルも「性的少数者差別やヘイトスピーチ解消に向けたと条例案 成立へ(NHK)」と本来の条例が柱としていた「五輪憲章に謳われている人権尊重」よりも2章3章で取り上げたLGBT、ヘイトスピーチに注目が集まっています。こうなるのは分かっていました。
私達は、「いかなる差別をなくそう」という五輪憲章を立てながら、2章3章を単独で作った考え方に矛盾が生じるとしてきましたが、明確な回答は得られません。条例案の出来た時期含めて審議過程が不十分。条例成立後の運用も後付けなわけです。
パフォーマンス的な発想で時流に乗って、世間受けしそうな条例を制定していくレベルになってしまった首都東京の議会に身を置く事が恥ずかしく、そして悔しくなりました。「五輪と言えば何でも良いのか?」という掛け声の下で、予算圧縮を訴える風潮があると思えば、今度は「五輪憲章」を理由に話題性を作る条例を数の力で押し切ってしまったのです。
本当のLGBT理解とオリンピック・パラリンピックへ
前のブログでも書きましたが、リオ大会では公式バッジとして「レインボーフラッグ」「トランスジェンダーマーク」が販売されていました。過去のオリンピックでは10年冬季のバンクーバー以降はLGBT情報に関する様々な情報拠点となる「プライドハウス」が設置され、多くの人が集まっています。LGBTについて、こういう事例と東京都はどう向き合うのかという事が私は大切だと考えています。前述の所管局とのやり取りの中で、担当者がオリンピック時のこのような対応を考えていない趣旨の説明をされました。この考え方が変わっていくように、多角度から政策提言していくのが私の使命だと感じています。
混迷を極めた総務委員会
何れにしても、昨日の総務委員会理事会は1
2時30分開始予定だったのが21時近くまで開会がずれ込みました。これは、2日の審査内における自民党鈴木都議の発言に不適切なものがあったと与党会派から指摘があった事に起因します。そこで、委員長が言葉の確認が必要なので発言の文字起こしを大至急事務方に指示。しかし、音源から文字起こすには100分の質疑ですから時間がかかり、一定部分が終わった時点で各会派で確認したところ「問題はない」という結論に至り、ようやく開会となったのです。そして、いざ始めようと委員長は席につきましたが、一部会派が内部調整出来ていないと理事会の部屋に現れず、委員長が退室。その後、ようやく理事会が開会さたのは良いのですが、何と本来は入室出来ない「都民ファーストの会政調会事務総長」が入っていて議会局職員に退室させられるという様々な事があった10月3日です。
まとめますが、今、間違いなく議会の矜持は見えず、昨日は都政史上に汚点を残した日である事は過言ではありません。繰り返しなりますが、私達は「継続審査」を求めました。その他、修正案や付帯決議案の提出が共産や立憲・民主からありました。やっぱり、満足いく内容でないと感じているなら「なぜ継続には反対」したのでしょうか。
また「条例を作った」事を実績として訴えていく都議会議員がいますが、皆様とは考えたいのは果たしてそれが正しいのだろうかという事です。私達がやっているのは「条例をどう作り、どう運用し、どう問題解決させるか」がワンパッケージです。
「作る」事が目的となり、審議不十分を繰り返す今の都政で本当に良いと思っているのか?他党の都議さんお一人お一人の「本当の思い」を信じて、また都政と向き合っていきます。一緒に互いに熱い政策論議を通じて「良い条例」を実現させていきたいです。
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