日本の建築技術は匠の系譜。新国立建設を機にもっと学ばなければと思う。

こんにちは。

今週は1週間、調査研究期間としています。勿論、他の事もやるのですが、いつも以上に時間配分をこちらに割こうと2ヶ月前から決めていました。普段は中々、テレビの報道番組もサラッとしか見ていなかったのですが、どうも「新国立競技場問題」と「相模原死体遺棄事件」は厚く放送されている気がします。

さて、この新国立問題ですが、私は設計をされたザハ・ハディド氏はイラク生まれのイギリス国籍を持つわけですが、そもそも設計というか建築文化をこれを機に多くの人々と考えていきたいと思っています。私はテレ朝に入って直ぐくらいの時に日本大学芸術学部の深谷基弘教授という「棟梁の技法」を研究されてきた先生と色々と勉強させて頂く機会を得て以来、建築には注目を持って参りました。

最初は、聖徳太子の時代から受け継がれてきた技術の奥深さを知り、法隆寺の「心柱」に見せられ、海外の建築の歴史・文化のようなものに興味を持ってきたという前段の上で少しこに国立競技場については書いておきたいと思います。

あくまで概要ですが、日本と海外の設計・建築を取り巻く環境も大きく異なります。
興味深い、隈研吾さんのお話を紹介してきます。

「ぼくたちが海外で建築物をつくるときは、設計保険に入らなければ、そもそも仕事ができないのです。たとえば、ガラスが割れて何か問題がおきたときとか、建築物におこりうるあらゆる問題をカバーする保険に設計者が入ることが義務づけられます。でも、日本で建築をつくるときはそんな必要はない。日本ではそういったリスクをゼネコンがカバーしているのです。たとえ設計図に原因があってガラスが落ちたとしても、ゼネコンが補償してくれるのです。」(匠の流儀 298P 春秋社)

こんな事も建築のプロ達は分かっているわけですが、我々アマチュアにはよく知られていない事です。

こんな事例を紹介するのは、もっと多くの人が「プロフェッショナル」の仕事を根本から理解する事が必要です。「安ければ良い」という考え方も一つにあるでしょう。しかし、「安いには理由がある」「高いには理由がある」この当たりの精査が必要です。勿論、より良いものがより安くは誰もが理想であります。

そこで、このザハ案が選ばれた審査委員会のコメントを見てみます。
「橋梁ともいうべき象徴的なアーチ状主架構の実現は、現代日本の建設技術の粋を尽くすべき挑戦となるものである」
「自然採光・自然換気・太陽光発電・地中熱利用・中水利用・雨水利用のクーリングシステム等の提案においても、日本の優れた環境技術が十分に活かされるだろう」
とあります。

こんな審査委員会の評価を知らないで「キールアーチに賛成・反対」の意見を各所でぶつけあっている人もいるのではないでしょうか。

舛添知事が言うように、新国立競技場建設事業は国の責任で行う事業であり、現時点において一都議会議員の私がとやかく言う段階の話ではないが、どうしてもテレビなどの「放送時間」が限られていると授業のような根本部分が抜けてしまうので触れておかなければならないかなと思いました。

そういえば、こん記述も審査委員会からありました。
「現代のような停滞気味の社会状況の中で、国家プロジェクトとしてつくられる新競技場には、単純な施設拡充以上の、社会に対するメッセージ、新しい時代のシンボルとなるべき創造力が期待される。国際デザイン競技募集要項では、これを「地球人にとっての希望の象徴となるべきデザイン」として表現した。」

現実的な問題を論じるより、5年先10年先20年先といった「夢」や「希望」を語るには勇気や胆力が求められます。16年五輪招致も、20年五輪招致も批判の声はあった中で、招致し「東京」「日本」を元気にするんだと言い続けるのは孤独の戦いです。

新国立競技場のみならず、2020年を契機に東京を世界で一番の都市にする為に、多くの皆さんと意見を交換し、調査研究をし、東京都が責任持って行う事業については私も気を引き締めて努力していかねばならないのかなと思っています。

日本には優れた建築技術者が沢山います。
この人達が少なくとも海外流出せぬよう、保護そして後生の育成の重要性を考える今日この頃です。

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